1982.7.3 ゆうかんさろん

 

それが陶磁の花とはいささか信じ難かった。まるでドライフラワーだ。もう一つ、陶磁を彫った小さなカフスボタンやブローチなど。陶彫と呼んでいるのが心憎い。じっと見つめるうちに目がちかちかしてきた。鳳凰(ほうおう)や鶴、天駆ける馬。細かい羽先や手足が、なんど首を傾げても理解できぬほどの繊細さで彫られている。しかも鶴や馬たちは長させいぜい1〜2ミリの薄さで焼き上げられスカイブルーやサーモンピンクの陶の台に張り合わされている。手がけているのは瀬戸市東町28、加藤紀元さん(52)一家6人。手作りの大きな表札に筆が流れて「陶華」とある。

代々が窯焼き(陶器作り)の家に生まれたさががあった。人形や鳥の置物に添えられる程度だった花の焼き物に思いを凝らした。額に入れられる陶の花を作り出して十年がたつ。クチナシやサザンカに梅、アザミ。庭先の花や木が先生役だ。

スケッチをして決めるまでに1ヶ月はかかる。「(牛)の骨をどれだけ加えるか、粒子は、熱は。湿気が多いほど仕事がしやすい。乾いていると土はすぐ粘着力をなくす。息をしてるんです。」素焼きをして色をつけてまた焼く。花はいま、奥さんの晃子さん(46)が受け持ち加藤さんは陶彫に打ち込む。

竹のヘラ、張りを研いだ手作りの道具が20本ほど。型抜きした鶴や馬を、ルーペでのぞきながら、さっと彫る。「集中すれば小さなものがだんだん大きく見えてくる。急ぐと失敗する。だからこの仕事、早朝しかできない。」しくじっては壊してたどり着いた現在.人はまねをしたがる。そっと買っていったものの「どうしても作れなかった」といった人もいたとか。「まねされてもそれ以上のものを作ろうとする。それがいいものを生む」と、気にもしていない。仕事場では長男夫妻に2人の娘さんが陶磁のアクセサリーを作っている。誰も干渉しない。個性こそ命と思うからだ。